須永高広氏インタビュー

・・・技法はegg temperaですか。2002年の時には版画(福井良之助氏のペーパースクリーン技法に触発されて、版画制作を始められた)を拝見したように思うのですが・・。

今はお休みしていますが、版画をずっと発表していました。egg tempera(石膏を支持体にした卵テンペラ)は、2004年に初めて発表しています。もう4年ぐらい描いていますね。

・・・果物を描かれたのは、フォルムに惹かれてでしょうか。

そうですね。果物の形は、自然にできている形だから魅力を感じます。丸みを帯びていますでしょ。その丸い形が好きなんです。それに果物は、生き生きしている。例え画面が枯れたような色調で見えても「生」を内包していたいという思いがありますので。

・・・拝見していると、作品の中に揺らぎをとても感じます。空間が微妙に振動しているような・・・。

1週間描く対象を見続けていたら、1週間、毎日違うように見えてくるといいますか。それが重なっているところは確かにありますね。

・・・重なっているということは、描くことで時々刻々新しい形が生み出されて生成されていくということですか

描き方というのは、技法的なものではなくて、もっと肉体的なものですよね。この揺らぎは抽象的な画面の方がもっと強いように思います。抽象というのは形がないものだから、その形を作るために(かといって明確な形を求めているわけではないけれども)・・・動いていないと形は出てこない。それはかなり試行錯誤した末に現れてくるといいますか。

・・・その形というのは現実的な形ではなく、画面の中に存在する何か。その何かが立ち現れることで、絵画が成立するわけですね。

ええ。具体的な気持ちを描いているわけではないので、それは言葉にはなりにくいんですが、敢えて言えば「何か」でしょうね。

・・・版画で培われたイメージを重ねていく手法が、タブローにおいてよりフェードインしてきたということでしょうか。

自分でも少し前に気づいたのですが、版画とテンペラは、単純に出てくる結果は違うかもしれませんけれども、同根のように思います。版画も強い調子の色を置いて、白いインクを被せていますし、テンペラもかなりラフな筆致で色を置いて十分厚みを持った段階で白を置いています。30歳を過ぎてからペーパースクリーンの技法に取り組みましたが、ふと気づいたときに、三つ四つの頃から同じことをやり続けているのではないかと思うのです。

〜31日(火)まで。

(c)SUNAGA TAKAHIRO