内林武史氏インタビュー

・・・タイトルは「机の上に宇宙を探す」。作品を拝見していると、不思議な懐かしさと共に、いろいろな夢や遊び心を思い出させてくれますね。

「机の上に宇宙を探す」というタイトルは、人それぞれの自分の宇宙を探してほしいという意味合いでつけました。僕の作品は、一見その答えみたいな作品でもあるんだけれども、実は答えはそんなに簡単に見つかるものではない。それに「探す」ということは、すぐに見つかってしまったら面白くはありませんからね。宇宙というのは、誰もが知らない世界なわけです。例えば星にも限られた一生があって、夜空に輝いている星は、今現在は存在していないのかもしれない。それはとても不思議ですよね。それは理科や科学で解き明かされる世界だけれど、そういう知らない世界に近づけたらなって・・・未知であることは何かを創造することだと思いますからね。

・・・HP(http://www.garag.net/)を拝見しましたが、小学校のときのエピソードをとても面白く読ませていただきました。そういえば理科の実験とか、お話の中にでてきますね。

あのときからこのまんまであまり変わっていないんです(笑)。ただ使える道具や材料を買うお金ができたりとか、ちょっと技術が上達したので、いろいろなものが制作できるようになったぐらいで、基本的に作りたいものは、変わっていないように思います。ただ作りたいものを掘り起こして作っているみたいな感じですかね。

・・・はじめからオブジェを作られていたのでしょうか。

ええ。オブジェとか彫刻という言葉を知らないときから、工作をする子供がそのまま大人になったようなものなので、絵を描くよりも、ものを作る方が好きでした。

・・・下絵を描かずに、制作されるということですが、イメージが頭に中にあるということですか。

イメージはほぼ頭の中にありますね。それを再現するといいますか、生み出すんですよ。寝る前にふと思い浮かんだものは、忘れないように簡単なメモはしますけれど、いつも作品を作るときはスケッチなどを描かずに、小さい作品を制作するんです。それは立体のスケッチみたいなものなんです。そこから他の作品のアイディアが生まれたりもしますし、大きい作品を作る上での重要なヒントにもなるんです。

・・・生み出すといえば、最近、生命の起原を探る為に打ち上げられた彗星探査機の『スターダスト』が、46億年前の太陽系誕生当時の物質を含むと考えられている星くずを集めて地球に帰還しましたよね。そのニュースを聞いて、私達のルーツはほうき星の尾の中にあるのかも知れないと思うと、わくわくするような気持ちを覚えました。でもマクロに目を向ければ、ミクロが見えてくるように、内なる細胞ひとつひとつにも宇宙が内包されているのではないかとも思うんです。

マクロとミクロがつながっているという考え方は、結構好きです。小さな粒をどこまで分割できるか。最後の最後は宇宙になったりとか、そういうのも好きです。

・・・今回は、「excavation」(発掘という意味)という作品を制作されたとお聞きしましたが、発掘という言葉は、何かを呼び起こすきっかけになる言葉ですね。

呼び起こすという感じはありますね。そもそもDNAの原形質を掘り起こしているみたいな感じであったり、脳みその奥の方から引っぱり出してものを作っていますから。逆になるべく新しい情報を入れないようにしてるところがあって、掘り起こす作業に必死になっている部分があるかもしれません。

・・・内林さんの作品は、記憶を掘り起こしていく作業かもしれませんね。その記憶というのは、それこそ46億年前の太陽系誕生時からの生命の記憶みたいなもの・・・「reunion」というタイトルの石を眺めているとそんな気持ちになります。

例えば生き物が、奥が深い穴をすごく怖がったりとか、蛇みたいな形のものをすごく恐れたりとか、そういう記憶が刻みこまれているのではないかと、それは人間の形になる前からあるのかもしれないですね。個々人が生まれてからもっている記憶だけではなく、実際はわからないけれど、そういう生命記憶みたいなものはあるのかもしれませんね。

・・・以前三木成夫さんの本を読んだことがあるんですが、人間を含めた生物の体の中には内蔵波動というのがあって、それが潮の満ち引きや天体の運行とも関連しているらしいんですよ。

引力は月の位置によって微妙に変わるだろうし、太陽や宇宙の力が、確実に体に働いていますものね。

・・・その見えないものが自分の体に作用して、一つの形を作るときに、何かが生まれるのでしょうね。

作品を生むという作業は、ただ見せるだけではなくて、何かを伝えなければいけないといつも感じているんですけれど、言葉でうまく伝えられないから、作品を作って発表しているんだと思うんです。

・・・確かに言葉にするのは難しいと思います。でも体で感じる風や匂いや光など・・・それがきっかけになって何かを呼び覚ましてくれるもの、それは形而上学的世界かもしれないけれども、人に安らぎを与えてくれるものだと思いますね。

作品の意味というよりも、見た人にこれを見てどう思うか。例えば「自分はこういうことを伝えようと思うんだけれど」と言ったときに、どれだけ食い違いがあるのかということを知りたいし、きっとみんな見た感想は違うと思うんです。それがとても面白いと思うから、たくさんの人に会いたいと思いますね。そして僕が作品を楽しんで作っているのが解ってくれたらうれしいです。

〜7月1日(土)まで。

(c)UCHIBAYASHI TAKESHI