GALLERY TSUBAKI GT2

呉本俊松 版画展
TOSHIMATU KUREMOTO
2001年10月17日(水) - 11月2日(金)
11:00 - 18:30 日曜休廊

「nude」ed. 15 35x26cm 木版画

静かで穏和な絵なのだが、絵画の豊かさをたっぷり湛えている。

総合力に優れた絵だともいえるだろう。

線、面、配色、デッサン、空間、構図、筆触etc.。絵画の豊かさを支える要素は、分析すれば、きりもなく分類できるだろう。

厳しく批判的に見れば、呉本にも弱い部分はあるのだろう。

しかし、呉本の近作は、見る側がそうした意地悪な詮索を始める前に、作品の絵画性の魅力に視線を引き寄せて、呉本の独自の世界観、人生観が形造る絵画世界に共感して、生きる喜びを共有させる力を帯びている。



誠実で、素直、正政法の画家である。

あるいは、愚直な画家とも言えるかもしれない。

1970年代半ばに、大型新人として、関西の美術界で注目を集めてから、終始、近道に逃れることなく、油絵本来の造形性を磨くという正道を通 じて、自らの絵画世界を豊かにしてきた。



あるいは、欲張りな画家だと言えるかもしれない。

本人は、たぶん否定するだろう。

持って生まれた多才な造形力と、絵画史の多様な成果の中から、断腸の思いで多くのものを切り捨てて、現在の完成に達したに違いない。それでも、捨て切れなかった多くの要素が生き残って、近作を支えている。



絵画は絵空事であってほしくない。

現実から汲みあげられて、絵画に昇華されたリアリティの確かさが、作品の質を保証する。

絵画のリアリティは一様ではない。現実との、つながり方、距離の取り方に応じてさまざまなレベルのリアリティがある。

呉本の画面には、それぞれが高度で視覚を楽しませる、異質のリアリティが、並存していて、視線は絵の中をゆっくりと探索して出会いの喜びを重ねることができる。



まず、手製の木の額縁が、現実そのもののリアリティの感触で、絵画の中と、外の現実を区切りながらつないでいる。

背景となる落ち着いたモノクロームの色面が、絵画空間のリアリティを確保する。

下部に描かれた、さっぱりとした抽象図形が形態のリアリティを体現する。

時に小枝を塗り込めたりして、古い漆喰の壁のような質感の部分には、触覚のリアリティが息づく。
それらのリアリティにガードされたような感じで、画面の芯ともいえる、黒い鏡のような中心部がある。

「鏡」の中に、ギリシアの壷絵のようなデリケートな線で描かれているのは、呉本の青春期の源泉が求められそうだ。

2000年9月 安黒 正流


お問い合わせ e-mail - gtsubaki@yb3.so-net.ne.jp

No.
タイトル サイズ(cm)

1
51×38

2
歩きだす 51×38

3
ロベルト 26×17

4
黄色いヌード 35.4×25.3

5
くだもののある室内 35.4×25.3

6
nude 35.4×25.3

7
すわる人 35.4×25.3

8
山の水辺 35.4×25.3

9
ひとりぼっち 35.4×25.3

呉本俊松 関連情報
2000.2 1998.2

1950    長野県伊那市生まれ
1973    大阪芸術大学卒業

個展

1975

信濃橋画廊(大阪)

1988

オンギャラリー(大阪)

1976

信濃橋画廊(大阪)

 

ギャラリーなかむら(京都)

1977

ギャラリー16(京都)

1989

韓国画廊(ソウル)

1978

ギャラリー16(京都)

 

オンギャラリー(大阪)

1979

信濃橋画廊(大阪)

1990

信濃橋画廊(大阪)

1980

信濃橋画廊(大阪)

 

オンギャラリー(大阪)

 

多田画廊(大阪)

1991

シティギャラリー(神戸)

1981

多田画廊(大阪)

1992

集雅堂ギャラリー(大阪)

1982

朝日画廊(京都)

 

オンギャラリー(大阪)

1983

多田画廊(大阪)、鎌倉画廊(東京)

1993

シティギャラリー(こうべ)

1985

オンギャラリー(大阪)

1995

山木美術(大阪)

1986

オンギャラリー(大阪)

1998

ギャラリー椿(東京)

1987

信濃橋画廊(大阪)

1999

山木画廊(大阪)

   

2000

ギャラリー椿(東京)

グループ展

1976

12回現代日本美術展(東京都美術館・京都市美術館)
アートナウ‘76(兵庫県立近代美術館)
6回クラコウ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)

1977

13回現代日本美術展
12回リュブアナ国際版画ビエンナーレ(ユーゴスラビア)

1978

7回クラコウ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)

1979

14回現代日本美術展(東京都美術館・京都市美術館)

1980

2回ジャパン・エンバ美術コンクール・グランプリ受賞

1981

アート・ナウ‘70〜’80(兵庫県立近代美術館)

1982

宇部絵画ビエンナーレ・招待作品

1983

いま絵画は-OSAKA‘83(大阪府立現代美術センター)

1984

15回日本国際美術展

1985

アート・フロント50(心斎橋パルコ・大阪)

1988

6回大阪現代アートフェアー(大阪府立現代美術センター)
88絵画・イラストコンクール・優秀賞

1989

洋画100和歌山大賞展・優秀賞
時代を担う作家展(京都府立文化芸術会館)

1990

90IBM絵画・イラストコンクール・優秀賞

1991

20回現代日本美術展(東京都美術館・京都市美術館)
紀の国絵画大賞展・大賞受賞

1992

アート・メディア・コンセプション92(OBPツイン21)

1993

「テジョン・エキスポ国際版画展」(韓国)

1994

関西の美術1950sから1970s-創造者たちのメッセージ(兵庫県立近代美術館)

1995

1回「美の予感」(東京-横浜) (東京・横浜・京都・大阪 高島屋)
二つの視点‘95-出会いとその後- (大阪芸術大学+阪急百貨店)
The Tree, Part U (ワシントンD.C. 笹川平和財団)

1996

津高和一、泉茂をめぐる作家展(京阪百貨店・大阪)

1997

リリシズムの画家達展(東京・ギャラリー椿)
4回浅井忠記念賞展(千葉県立美術館)

1998

21世紀の美術シーンを予見させる現代美術作家展(比良美術館)

1999

開廊20周年記念展 31人の自画像(番画廊)
20世紀の証明=企画主催 大阪芸術大学=ABCギャラリー



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